橘玲氏のトークライブ
本名、写真非公開の橘氏の生の話が聞けるとあって会場には年齢性別問わず多くの人が来場していました。
印象
登場したのは白髪の少しシャイそうなおじさんだった。国家や社会の歪みを鋭く指摘する切れ味のある論調から「タックスヘイブン」の登場人物「古波蔵」みたいなギラギラしたちょいワルな人をイメージしていましたので、あまりのマイルドさにびっくりしました。
そしてマイクを通しても控えめな声で、優しそうなおじさんでした。
内容
幸福の資本論や言ってはいけない残酷すぎる真実からの話を中心にでも著書からはちょっと違った角度で語ってくれました。時間にして二時間弱、最後に質問も受け付けていて充実した時間を過ごせました。
人と社会
まず社会を語る上で生物進化論が今考えられる、いろいろな諸説の中で説得力があると思っているとのこと。
それは生物の基本原理は生存と子孫繁栄にあり、人間もまた同じで基本戦略に組み込まれているからで、人類は進化したとはいえやっていることは基本的に変わりはないのではないか。
そして長年、子孫繁栄のために組み込まれた基本戦略「プログラム」は意志の力で抗うのはかなり難しい。
それはダイエットだったり、恋愛や性欲だったり誰も実感があるので皆さんご存知でしょうとのこと。
確かに僕ら人類の祖先が生まれて1万年以上。何世代にも渡って多くの戦略が試され適応できなかったものは生き残れなかった。
しかも今は恐ろしいスピードで技術や社会がいろいろ変化している。でも僕ら人類は昔のプログラムのまま生きている、そこにギャップが生まれるのは当然だと思う。
本能
まず生き残るためには飢餓から逃れないと死んでしまう。そのため人間は少しの空腹でも、「ご飯食べろ」「食事を探せ」と頭の中でアラート「警告」が鳴るようにできている。
本来人間は一週間ぐらいは水と塩だけでも生きていけるけど、狩などで生きていた時代では早く行動しないとそれこそ死んでしまう。
だからアラートは早く鳴るようにプログラムされているというわけですね。
ただ、今の飽食の時代アラートに従ってファストフードばかり食べていたら、すぐに肥満になってしまう。
こんなところにも今の社会と人間のプログラムのギャップがあると話していました。
意識無意識
人の意識、無意識についても今流行りの「VR」に例えて話していた。
橘氏は実際に「VR」を体験してきたのだと言う。
高層ビルから上層階から一本の「板」が出ていて、その先にいる猫を助けると言った「VR」。これを自ら体験してきて、「VR」と分かっていても大変な恐怖を感じたと語ってました。
これは怖いですよね。
「VR」体験コーナーでは隣にスタッフがつきっきりでいるのは、混乱したひとが腰を抜かしてしまうことがあるかららしい。
それほど、今の「VR」はよくできているとのこと。
話はそこから人間の生存本能がどれほど強力かと言う話に。
「VR」だと分かっていても恐怖のあまり生存本能がアラートを異常に発して冷静な判断ができなくなるくらい人間は生存本能が強い。
種明かしをして「VR」で落ちても大丈夫ですよと言ったら人は少しは安心できるど、このカラクリを知らないと誰でも冷静な判断はできなくなる。
いじめや社会で追い込まれている当事者に「そんなものは一時的なものだよ」と言ったところで人の生存本能がアラートを出し冷静な判断を奪ってしまうから、周りの声は届かない。
学校にいかければいいとか、住む場所や職場を変えればいいとか、そのアドバイスすらも冷静に受け入れられない。
だから、人は無意識を意識でコントロールすることは並大抵ではない。
ひとが怪しげな投資話などに乗ってしまうのも、無意識で自分は特別だと思っているからであり、その無意識をマーケティングなどでは狙ってくるのですね。
未知のと接し方
続いて話は人の行動タイプの話に。
人は今のまで触れたことのないものに対して
幸福になるためには
そして話は「幸福の資本論」で書かれていた話へ。
人生のポートフォリオを作る上で
「お金」「やりがい」「人の繋がり」これらを分散させておくことが大事ではないと改めて説いてました。
「天災」や「災い」「失業」や「退職」「離婚」や「人付き合いの破綻」人生様々リスクがある。
それらリスクを分散させておくことで、一つがダメでも他の二つがあればダメージは少ない。
そして、選択肢を多く持つことでひとつを失った時にも冷静な判断を取れるような人生設計をしておくことが大事だと。
あと、どうしても深刻な危機だった場合は人間の本能がアラートを出し冷静な判断を奪うから、まずはその状態を脱出(離れること)すること。
例えば「金銭」の問題であれば経済合理的な考え方をすれば、いくら不景気や貧困の問題を抱えるこの日本においていくらでも脱出する方法はあるし、飢え死にすることも稀である。そう、それでもまだ日本は諸外国(どこかの独裁政権なのかな)に比べれたら日本に生まれてきているアドバンテージはあるのだからとも語っていました。
その上で冷静に判断し自分にとっての幸福の条件考え、リスクを分散すると良いのではないかと。
これは「幸福の資本論」に書いてある通りの内容でした。
まとめ
まだまだ話はたくさんあったけど僕なりにまとめると
今の社会と人間のプログラムはミスマッチが多く、とても生きにくい世の中になっているかもしれない。
でも、
その仕組み(人の認知能力や本能が引き起こす行動)を知っていると知らないのでは大きな違いがあり「人の本能」をわかった上で自分と上手に付き合おう。
無意識をコントロールすることは難しい、ただ状況を俯瞰して「カラクリ」がわかれば人は混乱しない。
逆にいうと何かに追い込まれて、異常なアラートが出ているときは冷静になれるまでその場を一旦離れること。
異常なアラートは人間本能(プログラム)が起こしているという状況を認知、認識することで違った打開策が見つかるのではないか?
平均寿命や社会福祉の状況を見ると長く働き続ける社会が来るはずで、どうせならやりがいのある仕事を見つけよう。まだまだ先は長い遅くはない。
そんな感想でした。
最後に不満をひとつ挙げるなら、橘氏は普段トークライブをあまりしないので、マイクを使う機会がないのでしょうが、資料を見る時に時々オフマイクになり聞き取れないことがありました。唯一そこだけが少し不満でした笑
普段顔の見えない橘氏の生の声が聞けて、とても参考になりました!